授業実施レポート
 部活動における地域移行の実践例~佐賀県の事例~【複業先生特別授業レポート】

この記事では、LX DESIGN(以下:LX)が主催した学校の先生向けイベント「部活動における地域移行の実践例~佐賀県の事例~」について紹介します。

昨今話題になっている、先生の働き方改革。その一手として注目されているのが、部活動における地域移行です。今回は佐賀県鹿島市立東部中学校サッカー部の事例をもとに、複業先生のイベントに参加された2名の指導者が「部活動における地域移行」についてお話しされました。

今回の「複業先生」は、佐賀県鹿島市立東部中学校サッカー部顧問の前田良紀(まえだ・よしのり)氏と、部活動と外部指導者をつなぐマッチングプラットフォーム『sukusupo(すくスポ)』を運営する、株式会社WIDE代表取締役の北原誠大(きたはら・まさひろ)氏の2名。中でも北原氏はsukusupo運営に先駆け、東部中学校サッカー部の外部指導を引き受けた経験を持っています。

現役教師・外部指導者のそれぞれの立場から見える、部活動の地域移行の意義や課題とは何なのでしょうか。

<複業先生プロフィール>

前田良紀氏 鹿島市立東部中学校サッカー部顧問。鹿島市立東部中学校勤務4年目。保健体育科。サッカー部顧問は赴任してから4年間指導する。専門は剣道。

北原誠大氏 株式会社WIDE、代表取締役。佐賀大学教育学部在籍。同時に株式会社WIDEを設立し、代表取締役に就任。部活動と外部指導者をつなぐマッチングプラットフォーム『sukusupo(すくスポ)』を運営。

sukusupo実証にあたり、北原氏自身が外部指導者に

まずは前田氏が、鹿島市立東部中学校サッカー部の外部指導者として北原氏を迎え入れた経緯についてお話ししました。

「もともと別の外部指導者に依頼していたのですが、諸事情により参加ができなくなってしまって。それ以降僕を含めた2名の顧問で指導にあたっていました。しかし、チームの成績が振るわず悩んでいて。そこで北原氏に相談し、指導を担当していただくことが決まりました。」

外部指導者の活用については、生徒の保護者も肯定的だったそうです。一方で懸念となったのは、金銭面。外部指導者への報酬の有無については、検討に時間を要したと言います。

話し合いの結果、北原氏は無償で指導を引き受けることに。当時について、北原氏は次のようにお話しました。

「前田先生の依頼を引き受けたのは、sukusupoの実証を行うためでもありました。事業である以上は利益を出す必要があります。しかし報酬によって実証の機会を失うのはもったいないと考え、実施に至りました。」

今回はボランティアという形での参加が決まったものの、実際の運用では費用が発生する予定。金額は、部活動の予算規模や外部指導者の希望に可能な限り寄り添った上で決定する方針だそうです。

教師の負担軽減、生徒の成長。外部指導者の活用による前向きな変化

約3ヶ月間にわたり、東部中学校サッカー部の指導を担当することが決まった北原氏。原則は週に2回、大会が近づくとほぼ毎日練習に参加されたそうです。

「北原さんにはコミュニケーションを密にとっていただき、本当に助かりました。日程調整はもちろん、欠席される日の練習メニューも組んでいただくなど、きめ細やかな配慮をいただきましたね。」

また、北原氏の専門的な指導により、「生徒の部活動に対する姿勢が目に見えて変わった」「技術指導や部活動業務時間、精神的負担などにおける自分の負担が減った」と前田氏は続けます。

「保護者の方からも、『家庭でサッカーの話題が増えた』『子どものサッカーに取り組む態度が変わった』と好評をいただきました。」

外部指導者による専門的な指導を通して、生徒のサッカー技術はもちろん、精神面にもプラスな変化が見られたようです。

生徒の向上心と各所の協力体制が成功の鍵

部活動の地域移行を成功させるポイントについて、前田氏は次のように考察しました。

「生徒自身が『専門的な指導を受けたい』『スキルを磨いて上を目指したい』などの向上心を持つことが、何より重要だと思います。生徒たちの熱い想いがあれば、周りの保護者や学校も外部指導者の採用に向けて、協力体制をとってくれるでしょう。」

一方で、部活動の地域移行を進めるには、生徒や学校だけでなく、保護者の協力も欠かせません。北原氏は、保護者と外部指導者の信頼関係がキーポイントになると言いました。

「保護者は私たちが思っている以上に、指導者の発言一つひとつに耳を傾けてくださいます。適切な言葉選びや指導で保護者との信頼関係を築き、『この人に指導をお願いしたい』と思ってもらうことが、部活動の地域移行を円滑に進めるポイントではないでしょうか。」

続いて話題に上がったのは、外部指導者への情報共有。北原氏は、東部中学校での指導経験を次のように振り返りました。

「指導開始前、東部中学校の校長先生、前田先生とそれぞれマンツーマンで面談を実施しました。名簿と照らし合わせながら生徒の性格やプレースタイルを細かく共有いただいたことで、実際の指導もスムーズに進められました。」

また北原氏曰く、外部指導者に頼り切るのではなく、顧問と協力しながら進めていくことも大切だそうです。

「前田先生は、私が指導に参加した以降も練習に顔を出してくださいました。私が生徒を少々厳しめに指導した際、先生が率先してフォローしてくださる場面もありましたね。外部指導者に指導を丸投げするのではなく、しっかりと役割分担をすることも大切なポイントです。」

部活動の地域移行で目指すのは、先生に「選択肢を与えること」

続いて、部活動における外部指導者の導入にあたって直面する課題について伺いました。

まずあげられた課題は、「外部指導者が適任かどうかは、蓋を開けてみないとわからない」ということ。北原氏は、次のように語りました。

「外部指導者の質や適性に不安を覚える方に活用してほしいのが、sukusupoです。マッチングプラットフォームを通すことで、より条件に合った人材を提案できます。また、万が一別の人材に指導をお願いしたい場合も、私たちにお気軽に相談いただけます。」

続いて前田氏は、部活動の地域移行を進めるにあたり、今回のような導入事例の周知が大切だと言います。

「率直に言いますと、北原先生と出会う以前は、このようなプラットフォームの存在自体知りませんでした。株式会社WIDEの活動事例をより多くの学校関係者に知っていただくことで、部活動の地域移行が活発になるのではないでしょうか。」

最後に、問題視されている教員の長時間労働と部活動の負担について、2人はそれぞれ次のように述べました。

「サッカー部の顧問にはやりがいを感じており、今後も引き続き担当していきたいです。ただ、世の中の教員が必ずしも私のような考えを持っているわけではありません。部活動による給与・長時間労働問題に悩まされている先生が存在する現状は、みなさんに知っていただきたいです。」(前田氏)

「部活動を“自己実現の場”と捉えている先生も多くいらっしゃいますので、教師が顧問を外れることが必ずしも正しいとは限りません。外部指導者の活用により、顧問を担当するか否かを教師自身が選択できることこそが理想ではないでしょうか。」(北原氏)

複業先生が解決する教育現場で求められる「リアルな体験」

教育の現場では、これからもより「リアルな体験」が求められていきます。さまざまな分野で活躍している「プロの話」を聞く機会は、重要度を増していくでしょう。 プロの深い知識や視点が学習に加わると、生徒たちの視野を広げる。そして、彼らの興味関心を刺激し、学びをより一層深くすることができる。今回の授業を通じて、私たちLXはこのように実感しました。 

LXでは、定期的に学校の先生方向けの教育イベントを行っています。イベント情報は、「職員室革命の公式Twitter」で配信しています。皆さまぜひフォローください。過去のイベントレポートについては、弊社オウンドメディア「職員室革命」からご確認いただけます。


share:

関連記事

記事カテゴリー
教育Tips
ノウハウ
chevron_right
トレンド
chevron_right
インタビュー
レポート
LX DESIGNについて
お知らせ
chevron_right
カルチャー
chevron_right
プロダクト
chevron_right
メンバー紹介
chevron_right