授業実施レポート
【キャリア教育実践授業】3名の複業先生から学ぶ多様なキャリアの広げ方@氷見市立朝日丘小学校

2022年12月9日、富山県氷見市立朝日丘小学校にて複業先生を活用したキャリア教育が行われました。授業内では、アーティスト/起業家の宇田川氏、デザイナーの中村氏、弁護士の大島氏など多種多様な複業先生が登壇しました。

今回の授業で3名の複業先生は、自身の仕事内容や仕事をする上で大切にしていることを話しました。

<複業先生プロフィール>

宇田川哲男/ガリバー宇田川 アーティスト

アーティストキャリア専門家。日本アーティスト協会代表。日本工学院専門学校 芸能就業指導担当。メジャーデビューしても生活するのが難しかった経験を元に、全ジャンルのアーティストが幸せに暮らせるビジネスを作ろうと思い、一部上場企業での企画・営業職を経て起業。表現者の育成と社会課題解決事業を行っている。

中村彩子 デザイナー/制作会社代表

東京でデザイン制作会社を運営。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。2016年制作会社に就職、2017年から独立。ポスターやロゴなどのグラフィックデザインをはじめ、webデザインやプロダクト開発など幅広い案件に携わる。2022年度、グッドデザイン賞を受賞。プライベートでは3歳の娘を育てる。

大島日向 弁護士(第一東京弁護士会)

M&Aを中心とする企業法務を専門とし、また、宇宙ビジネスやアグリテック等の先端産業領域も取り扱う。小中高の各学年で法教育やキャリア教育の実績もあり、「こども六法」(弘文堂)の総合監修や「キャリア教育に活きる!仕事ファイル『法律の仕事』」(小峰書店)のインタビューに関与している。

「子どもたちの視野を広げたい」先生方の熱い想いから始まった3名の複業先生によるキャリア教育

今回の授業の依頼の背景は、氷見市立朝日丘小学校の先生方が「コロナ禍で子どもたちが教員以外の大人とかかわる機会が少なくなったこと」に課題感を覚えていたことから 、「社会で活躍する様々な職種の人とかかわってもらいたい」「子どもたちの視野を広げたい」という熱い思いがあったからです。

上記の課題や想いを汲み取り、3名の複業先生によるキャリア教育の授業設計を進めました。

アーティストからフリーランスまで幅広い生き方を伝えた「キャリア教育」の授業概要

▼授業概要

  • 日付:2022年12月9日
  • 授業時間:40分
  • 開催方法:オンライン
  • 授業形態:講義形式
  • 参加人数:46名
  • 学年:小学6年生
  • 設置区分:公立小学校
  • 複業先生名:宇田川哲男氏・中村彩子氏・大島日向氏
  • 複業先生の職種:アーティスト・デザイナー・弁護士

▼当日のトークテーマと授業コンテンツ

<アーティスト/起業家・宇田川氏>

  • 宇田川氏がアーティストとして活動するまでに歩んだプロセス
  • メジャーデビューしたからこそ経験したアーティストとしての挫折
  • 自分で会社を立ち上げるまでに得た社会で通用する仕事への姿勢

<デザイナー・中村氏>

  • デザイナーの仕事内容
  • インテリアデザイナーからグラフィックデザイナーまで存在するデザイナーの種類
  • デザイナーとして仕事をする上で大切にしていること

<弁護士・大島氏>

  • 金銭トラブルや相続のサポートから会社のビジネスのサポートまで行う弁護士の仕事内容
  • 「ルールが存在する理由を考える」弁護士として働く上で重要なこと

フリーランスアーティストから起業家へ|メジャーデビュー後の挫折を語る

授業のトップバッターを務めたのは、『ガリバー宇田川』という名前でアーティスト活動を行っている宇田川氏。アーティストデビューしたきっかけは、テレビ番組のカラオケのオーディションで優勝したことだそうです。

「僕、テレビに出たしメジャーデビューしたし、すぐに売れると思ったんですよ。でも、全然お金を稼ぐことはできないし、有名人にもなれませんでした。」

人生はそんなに甘くないと気づいた宇田川氏。また、メジャーデビューして2年程で契約が終了してしまったと続けます。

「契約が切れてからも、個人でアーティスト活動を続けましたが、現実は厳しくて。だから、ショッピングモールや商業施設に電話をして、『イベントで歌わせてもらえませんか?』と自分で営業を始めました。」

自分で営業する前は、自動的に仕事はもらえるものだと受け身の姿勢でいたと語る宇田川氏。しかし、自分で営業をしたことで、仕事に対する価値観が大きく変わったそうです。

「『自分で仕事を取りにいくことが、本来の仕事の在り方』であると気づくことができました。

また、自分でアーティストが仕事を取る方法を調べてみると、海外の有名アーティストでさえも、自分で営業をしていることを知りました。そこから自分で仕事をもらえる体制を整える必要があると思い、会社をつくりました。」

会社を立ち上げた後は、自分の活動を若い世代に伝えるイベントを開いたり、キャリア教育にも従事したりしていると続ける宇田川氏。宇田川氏によると自分が日本で初めて、「アーティストへのキャリア教育」に取り組む先駆者だそうです。

売れっ子デザイナー|仕事をする上で大切にしている心構えとは

続いての複業先生は、デザイナーの中村氏。パソコン3台を使って、自宅にいながら全国各地にいるさまざまなクライアントと仕事をしているそうです。

中村氏はまずはじめに、デザイナーには、スマホアプリ・サイトのデザインを作成する「Webデザイナー」やロゴや平面系のデザインを手掛ける「グラフィックデザイナー」、家具をコーディネートする「インテリアデザイナー」など、デザイナーと一口に言っても多種多様な職種があることを伝えます。

また中村氏はデザインをつくる上で「見る相手やお客さん(依頼主)のことを考えて、目的に合わせたデザインにすること」を大切にしていることを伝えました。

「デザインを通して、誰にどんな風に何を伝えたいか。デザインをつくる目的を考えることが大切です。目的によってデザインは大きく変わります。とにかくかっこいいものをつくりたい!自分の個性を爆発させたい!場合は、デザイナーではなくアーティストと呼ばれます。」

中村氏はデザイナーとしての心構えを伝えたあと、誰でもデザイナーになれるチャンスがあることを伝えます。

「私は子どもの頃に絵を描くことが好きだったことがきっかけでデザイナーを目指しましたが、絵が得意でなくてもデザイナーになれます。

『算数が好き』や『道具箱の中を整理することが好き』『手紙をデコることが好き』そんな子たちもデザイナーに向いていると思います。もしデザイナーに興味がある子がいれば、気軽に話しかけてくださいね。」

オランダ在住の現役弁護士|世の中にあるルールが存在する理由を考える

授業の最後に登壇した複業先生は、弁護士の大島氏。大島氏は現在、オランダに住みながら、日本に住むクライアントと仕事をしているそうです。

授業の冒頭、弁護士の仕事内容について話し始めました。

「弁護士の仕事は、一般的にイメージされる民事・刑事裁判において被告人を守ることや金銭トラブルのサポートを行うだけではありません。

弁護士は、家族が亡くなった際の相続の手続きを進めたり、会社が新しいビジネスを始める際のビジネスの基盤づくりをしたり、アプリやインターネット上のサービスで使用する『利用規約』をつくったりもします。」

また大島氏は弁護士の仕事において重要なことも伝えました。

「世の中にあるルールすべてが法律に記載されているわけではありません。しかし弁護士は、法律を考えるうえで、それ以前にそのルールが存在する理由を理解する必要があります。」と述べました。

「例えば、この学校では『シャーペンを持ってきてはいけない』というルールがあると聞きました。このルールにも存在する理由があります。鉛筆よりも高価なシャーペンを使うことで、万が一無くした・紛失した時のトラブルを防げますね。

また、鉛筆を使用した方が文字を書く際の適切な筆圧を身に付けられるメリットもあるんです。こんな風に、世の中の全てのルールには、そのルールが存在する理由があるんです。なぜそのルールがあるのか、を考えることは、そのルールの本質を理解する上でとても大切です。」

このように大島氏は弁護士に必要な要素は、ルールが存在する理由を理解することが弁護士になるためのファーストステップだと伝えました。

「世の中の仕事は楽しそう!」授業の最後に寄せられた生徒の感想

授業を受けた子どもたちからは「世の中には、いろんな職業があることがよくわかりました」「今回紹介してもらった仕事はどれも楽しそうだと思いました」「デザイナーは、絵が好きな人や片付けが得意な人も向いているかもしれないと知れて良かったです」「いろいろな人の話を聞けて、楽しかったです」などの感想をいただきました。

子どもたちの感想を見ると、今回の実施目的であった「子どもたちの視野を広げること」が十分に達成できたと感じる授業内容でした。

また、3名の複業先生が「いつでも話を聞きにきてくださいね」と子どもたちに伝え、社会とのつながりを提供できた時間となりました。

『複業先生』を通して学校教育に社会とのつながりを提供する

今回は、氷見市立朝日丘小学校にて行われたキャリア教育についてご紹介しました。

今回のように『複業先生』を活用したキャリア教育では、ゲストが今までの人生を伝えるだけでなく、ゲストと子どもたちの間に交流が生まれる点もひとつの魅力です。そして我々LXは今後も、社会と学校をつなげるパイプ役として、様々な場所で学校教育と社会のつながりをつくり続けます。

今回の記事を読んで「他校の事例も見てみたい」「『複業先生』について具体的に知りたい」「学校の先生とのつながりをつくりたい」と思われた学校の先生方、まずはお気軽にご相談ください。


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