2023年12月1日、新潟市立五十嵐小学校にて複業先生が登壇し「ポスターのデザインを学ぶ」授業が行われました。
今回登壇した複業先生はグラフィックデザイナーとして、そしてLX DESIGN(以下、LX)で活躍する中村氏。ポスターづくりを通して、デザインのコツと楽しさを小学生に届けました。
<複業先生プロフィール> 中村彩子 デザイナー/制作会社代表
東京でデザイン制作会社を運営。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。2016年制作会社に就職、2017年から独立。ポスターやロゴなどのグラフィックデザインをはじめ、webデザインやプロダクト開発など幅広い案件に携わる。2022年度、グッドデザイン賞を受賞。プライベートでは4歳の娘を育てる。
多くの人に届くポスターとは?デザインの方法と楽しさを伝えた授業の実施目的
五十嵐小学校では、探究学習の一貫でポスターをつくる予定があります。より多くの人に見てもらえるようプロからアドバイスをもらい、見やすいポスターを仕上げるコツを習得することが今回の授業の目的です。
ポスターづくりの基礎を伝えた授業概要
▼授業概要
- 日時:2023年12月1日
- 学校名:新潟市立五十嵐小学校
- 対象:小学5年生
- 生徒数:150人
- 形式:オンライン
- 授業時間:50分
- 授業テーマ:見やすいポスターの作り方
▼当日のトークテーマと授業コンテンツ
- ポスターのつくり方
- ポスターの内容を考えるコツ
- レイアウト・色選びのコツ
語源から知る「ポスターの役割」
授業の冒頭、中村氏は「ポスター」の語源を解説しました。「ポスター」とは、POST(柱)とER(貼る)が繋がって出来た言葉。人通りの多い柱に紙を貼って、情報を伝えたことからその名がついたといわれています。
多くの人に大切な情報を伝える役割をもつポスター。今回は「夏のキャンプのお知らせ」を例題に、子どもたちはポスターづくりを学びます。
またポスターをつくる際、「内容を整理すること」「レイアウトを組むこと」「色や飾りで表現すること」の3つが大切だと中村氏はいいました。
ポスターづくりのステップ①|内容を整理する
ポスターづくりのステップとしてまず初めに、内容の整理方法を解説します。最初に決めるべきことは「誰に、どんな情報を伝えるのか」。次に「見た人が何をすれば良いのか」を決めるそうです。「夏のキャンプのお知らせ」を例題に、考えてみましょう。
- 何を伝えたいのか?▶夏にキャンプのイベントがあること
- 誰が見るのか?▶小4~6年生
- どこに貼る?▶掲示板に貼る、印刷して配る
- どうしてもらいたい?▶電話やホームページでも参加申し込みをする
また、内容を整理する際、紙に情報を書き出すのは有効な手段のようです。「テーマ・メッセージ・日時・何をするか・詳細な説明・申し込みの情報」これらを書き出した上で、大切な情報を整理します。
まとめ
内容を整理するコツは
・誰に、どんな情報を伝えるのか考える
・見た人が何をすれば良いのか、わかるようにする
・必要な情報を紙に書き出す
ポスターづくりステップ②|レイアウトをする
続いて中村氏は、レイアウトを組む方法についてワークタイムを設けつつ解説します。
~ワークタイム|切ってみよう!~
子どもたちは、はさみを持ち、配られたフォーマットを点線に沿って4種類のパーツに切ります。配られた4種類のパーツは次の通りです。「サマーキャンプ参加者ぼしゅう」と書かれたタイトルパーツ。
「自然の中で楽しもう」と書かれたテーマパーツ。日時のパーツ。そして申し込み情報が書かれた、何をすれば良いかを伝えるパーツでした。
その中でも目立たせたいパーツは目立つ文字や大きい文字が使われています。情報を補うパーツは小さい文字が使われているものや、情報量が多いものがあります。子どもたちはパーツの違いによって、「主役の情報」と「主役を助ける情報」を判別できるのです。
〜ワークタイム|並べてみよう!〜
ワークタイムでは、切ったパーツを見やすく並べます。子どもたちはタイトルパーツや日時パーツを「主役の情報」と「主役を助ける情報」に整理し、配置を考えます。
~アイデアの共有タイム~
各クラスひとりずつ自分のレイアウトアイデアを発表。「誰か発表してくれる子はいるかな?」と中村氏が投げかけると、元気な声で「はい!はい!」と手を挙げる子どもたち。
「パーツを斜めに置いてみました!」
「見る順番が分かりやすいようにしてみました!」
「山を意識して三角型に置いてみました!」
最後に中村氏は「ポスターをつくるときはこうしてパズルみたいに組み立ててからつくってみると、たくさんのアイデアが生まれるし楽しいよ!」と伝えました。
ポスターづくりのステップ③|色や飾りで表現する
授業の後半、中村氏は「色や飾りを使った表現」を子どもたちに教えます。色の決め方は以下の2通り。
1.連想ゲームで決める
「キャンプといったら何を思い浮かべますか?」と中村氏。「森!」「海!」「たき火!」「山登り!」と次々と子どもたちは答えます。海といったら青、焚火といったら赤、山といったら緑、というように連想ゲームで色を決める方法があるそうです。
2.色が持つイメージで決める
次に、色が持つイメージで決める方法を中村氏は伝えました。色には以下のようにそれぞれイメージがあります。
赤:炎や太陽/心をふるいたたせる
オレンジ:明るく元気/親しみやすい/心を開かせる
黄:明るい気分/注意をうながす
緑:安全や自然/集中力UP/リラックスさせる
青:すずしげ/さわやか/空や水
「ポスターのイメージに合わせて色を選ぶのも良いでしょう。」と中村氏は付け加えました。
続いて、中村氏は色の組み合わせのコツを解説します。スライドに12の色相環を写し、子どもたちに配布します。
「近い色ほど仲良し。似た色同士の組み合わせの良いところは、まとまりがでること。注意するところは、地味になっちゃう組み合わせもあること。これはみんなが服を考えるときもそうだよね。」と身近な例を出して中村氏は説明します。
「遠い色ほどライバルの色。ライバル同士の組み合わせはメリハリが出る一方で、きつい印象になっちゃたり、チカチカして見にくかったりすることがあるります。」
スライドに様々な種類のロゴデザインを映し出す中村氏。「アニメキャラクターのロゴはライバルの色をうまく使ってメリハリをつけている例だよ。仲良しの色とライバルの色を意識して、次は自分で色を塗ってみよう!」と解説します。
~ワークタイム|色を塗ってみよう~
子どもたちはテーマカラーをひとつ決め、選んだ色の仲良しの色やライバルの色を使ってポスターに色を塗ります。さらに試したい人向けに、中村氏は「色の塗り方や絵を描くなどの工夫をして、パーツを目立たせてみるのも良いですね!」と話します。中村氏のアドバイスを聞いて子どもたちは真剣に黙々と色塗り。自分なりのデザインを模索します。
~色塗り共有タイム~
10分ほど経ち、「みんなどんな風に塗ったかな?見せてくれる人はいますか?」と中村氏が問いかけると、子どもたちは発表しようと次々とカメラの前に並びます。嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに、自分がどう考えてポスターのデザインをしたのか話してくれます。
「参加者ぼしゅうの文字をキャンプファイヤーの赤で囲ってみました!」
「サマーの文字をオレンジで、キャンプをの文字を緑で塗りました!」
「夜をイメージしてポスターの一部を黒く塗ってみました!」
「一つの文字の中でライバルの色を使って目立たせてみました!」
色塗りだけでなく、テントの絵や太陽の絵、キャンプファイヤーの絵を描いた子もたくさんいました。
中村氏の優しく丁寧な説明と、わかりやすいデザインの解説を受け、子どもたちは「内容の整理」「レイアウト」「色や飾り」を学ぶことができました。何より、子どもたちが終始楽しそうにポスターづくりをしていたことがとても印象的です。「デザインってこんなに楽しいんだ!」と気がついた子は多いでしょう。
『複業先生』についてまずはお気軽にお問い合わせください
今回の記事では新潟市立五十嵐小学校にて行われた、「デザインを楽しく学ぶ」授業を紹介しました。子どもたちはデザインのコツを知ることができたのに加え、「デザインの楽しさ」・「デザインを通して知る自分の個性」を感じることができました。
複業先生の登壇によって、グラフィックデザイナーからデザインを直接学べる貴重な機会と、「楽しい」から広がる学び。この2つをお届けできたのではないかと思います。
今回の記事を読んで「他校の事例も見てみたい」「『複業先生』について具体的に知りたい」「学校の先生とのつながりをつくりたい」と思われた学校の先生方、まずはお気軽にご相談ください。