複業(副業)で先生をしたい外部人材と学校現場をつなぎ、学校の人材不足を解決する人材プラットフォーム『複業先生』。
複業先生に登録すると、キャリア教育やグローバル教育、IT教育など幅広い分野の知見を「先生」として子どもたちに伝えられます。また、学校は複業先生を登用することで、今まで手がまわらなかった専門分野の授業を実施できると共に、教員の人材不足を解消することができます。
では実際にどのような複業先生が授業を行っているのでしょうか。今回は一般社団法人Lauqhterの理事を務める、ピン芸人かける氏に複業先生に登録したきっかけや授業づくりのコツをお伺いしました。
今回の複業先生インタビューは「#誰かに言いたくなる授業」として、LX DESIGN(以下:LX)が公式で紹介している授業のひとつです。LXメンバーが思わず「誰かに紹介したい!」と思った授業を抜粋し、SNSや記事で紹介しています。
<複業先生プロフィール>ピン芸人 かける氏 漫才教育家
2012年よしもとクリエイティブ・エージェンシーから芸人としてデビュー。現在は漫才教育家として、漫才を通してその人の面白さを引き出し、面白がれる人を増やしている。先生としては、幼児教育の塾で毎週150組の家庭の子どもたちとかかわる。2012年よしもとクリエイティブ・エージェンシーから芸人としてデビュー。現在は漫才教育家として、漫才を通してその人の面白さを引き出し、面白がれる人を増やしている。先生としては、幼児教育の塾で毎週、年中〜小学校6年生まで、150組の家庭の子どもたちに授業を教え、面談を通して成長をサポートしている。
「自分の漫才をいかした教育を」~満点評価を得る授業づくりのコツ~
まずは自己紹介をお願いいたします。
落語や漫才を用いた教育事業を行う一般社団法人Lauqhterで理事を務めています。私自身は漫才教育家であり、またお笑い人生駆け出し中のピン芸人かけるとして小学生から大人に向けて授業を実施したり、企業向けに落語的視点・笑いコンサル講座を開講していたりします。
これまでのキャリアを教えてください。
高校卒業後すぐに吉本芸人養成所に入りました。芸人としては今年で11年目です。教育にかかわり始めて5年目になります。
教育に目覚めたきっかけはありますか?
3人兄弟の末っ子として育ったため、「妹や弟が欲しかった」と思うことがあり、地域の子どもたちとよく遊んでいました。子どもは大好きだったものの、自分が教育の道に進むとは思っていませんでした。
キャリアが動いたのは、東京に出てきたタイミングで。芸人としての活動する中で、もうひとつお金を稼ぐ軸をつくろうと思いました。そのときに、楽亭じゅげむ(一般社団法人Lauqhter代表)と一緒に、花まる学習会の代表の高濱さんから「君の漫才や落語は面白いね。うちにおいでよ」と言われたことがきっかけです。
自分の漫才をいかした教育で子どもたちの役に立てるのであれば」と思いかかわるようになりました。
『複業先生』を知ったきっかけは何ですか?
ちょうど1年前、じゅげむに授業依頼がきたものの都合が合わず、代わりに僕がピンチヒッターとして授業依頼を受けたことがきっかけです。
初めての依頼だったため、学校現場や『複業先生』のサービスについてよく知らなかったのですが、実際に授業に登壇してみたら「これだけたくさんの中学生に授業をできるのは良いことだな」と思いました。
そうだったんですね。今はかけるさんの授業ではいつも大爆笑が起き、授業評価は満点を得ていますよね。授業づくりのコツを教えてください。
『複業先生』として登壇する授業にかかわらず様々な現場で意識していることが2つあります。
1つ目は「何を求めて私を選んでいただいたのか」「どんな意図で私に依頼をいただいたのか」を依頼主に聞くこと。
2つ目は臨機応変に対応することです。聞き手の反応を見て話題の順序を入れ替えたり、ウケが悪い話題は話す時間を短くしたりします。
では普段は授業のタイムテーブルを組んでいるのですか?
そうですね。基本的にタイムテーブルを組みますが、必要に応じて変更することもあります。
例えば、一番最初に授業依頼をもらった中学校では、ネタを披露しなかったからか生徒の反応が悪かったんです…そこで急遽タイムテーブルを変更し、ネタを披露。芸人としての説得力を持たせたことで、授業の後半から僕の話を楽しんで聞いてくれるようになりました。
具体的に見るポイントは、生徒のリアクションや表情ですか?
そうです。顔を見ればわかりますね。僕は芸人という職業柄のおかげかもしれませんが、普段からよく人を観察しています。例えば料理人でもお客さんの表情を見れば「料理があんまりおいしくないのかな」とわかると思います。
話ながら一人ひとりの表情を見ているのでしょうか?
はい、見ています。壁に向かって話かけるのではなく、みんなで授業をつくる「ライブ感」を重要視しています。
1番わかりやすい先生やおもしろい先生の授業を全国一律で配信すれば、授業は成立すると思うんです。でも、きっと「普段から生活を共にしている先生」「今日この1回のためにわざわざ来てくれた先生」でしか伝えられない熱量があります。その場でしか伝えられない熱量を伝えるためにも、反応を見るようにしています。
「失敗してもいい」「あなたはすでに面白い」と伝えたい|芸人だからこそできる多様な授業
今まで登壇した授業の内容を教えてください。
1番最初に登壇したのはプレゼンの授業でした。「“いじめ”と“いじり”のちがい」「正しいいじり方ってなんだろう」という問いから、相手の立場になって言葉を発する大切さを伝えました。
他にも「漫才づくりやネタづくりとは?」「日常を面白がるとは?」というテーマで授業をしたこともあります。
今年の5月〜10月はお笑いゼミを担当しました。2時間の授業で、落語や漫才、バラエティ番組の台本づくりなどを通して様々な分野のお笑いを教えました。
多くの授業を行い様々な生徒にかかわる中で、かけるさん自身が得た気づきや学びはありますか?
たくさんあります。中学生に授業をするときは、熱量高く教えるだけでは通用しませんでした。授業を楽しんでくれる子だけではなく、背もたれに背中が付いている子や、横柄な態度で聞いている子もいます。どう接するか悩んだ末、「授業の最初で心つかむことが大切だ」と思いつかみを意識するようになりました。
また意外とプレゼンのスキルは世の中でニーズがあることも『複業先生』のおかげで知ることができました。
かけるさんが考える、プレゼンで1番大事なスキルは何ですか?
相手の頭の中にある言葉を使って話すスキルです。
料理に置き換えてみると、自分で食材を買って美味しい料理をつくる人より、冷蔵庫の中にある食材を使って美味しい料理をつくれる人が、料理が上手い人だと僕は思います。
プレゼンも同様に、相手の頭の中にある言葉だけを使わないといけないんです。相手が小学1年生であろうと、学校の先生であろうと、政治家であろうと、わかる言葉に置き換える。これが「伝わる」言葉にすることです。
伝わる言葉を使うために、まずは相手を知ることも大切だと思います。年代が異なる相手と打ち解けるコツはありますか?
授業では、失敗してもいい場づくりを大事にしています。
お笑いやプレゼンを教えるとき、教える側が完璧であればあるほど生徒は失敗しづらい空気を感じると思うんです。 だから、生徒の何気ない発言に「今のめっちゃいいね。どんどん脱線していこう」「正しい回答をしたら面白くない。君たちがどう考えるかが大事だよ」と反応し、授業の序盤に失敗してもいい空気をつくります。
生徒の発言を即座にひろうかけるさんの姿勢で、子どもたちはとても安心すると思います。今後、複業先生として今後やってみたい授業はありますか?
「あなたはすでに面白いこと」を伝える授業を実施したいです。今は、子どもたちに「自分 のことを面白いと思う人?」と聞いても手が上がらないことがほとんどで…でも、自分で自分を面白いと思える、または自分を好きだと思える人に僕はなってほしい。
プレゼンや落語、漫才もやっていきたいですが、ワクワクできる企画もつくっていきたいです。例えば、バラエティ番組の企画をつくるとか、芸人になりきるとか面白そうですよね。
「自分を面白い人だと思うか」の問いは毎回の授業で聞いていますか?
新しく授業依頼を受けた学校では必ず聞きます。リピートしていただいた学校には、前回の授業から時間が経っていれば再度聞きますね。
最後に、複業先生登録者の方々に向けて一言お願いします。
まさか芸人という立場の僕が、人にプレゼンを教えられるとは思っていませんでした。でも実は自分では気づいていなかったニーズがあるんです。『複業先生』は、自分の能力と、能力を求めている人のマッチングサービスです。
自分のできることを磨いていけば、必ずその能力を必要としてくれる人がいます。もし授業に関して困っている人がいたら私に相談して下さい!
今回は貴重なお話をありがとうございました!
▼ピン芸人かける氏が登壇した授業レポートはこちら