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【インタビュー】今、教育の創り手になるVol.1「一人で何かを成し遂げるより、誰かの可能性に尽くしたい」

社会に開かれた、次世代の教育のあり方が模索されている、昨今。異なるフィールドから、新たな教育の「創り手」側に飛び込もうとしている人もいます。このインタビューではLX DESIGNの仲間を紹介し、その素顔、本人を突き動かす動機や挑戦にかける思いに迫ります。

今回は、生命保険会社、コンサル、監査法人を経て教育業界へと足を踏み入れた、竹中紳治(36)を取り上げます。監査法人に勤めていた頃から複業でLX DESIGNに関わり始め、11月1日より正社員に。現在はCPO(Chief People Officer/担当領域は経営企画・組織づくり)を担っています。なぜ異業種から教育の世界へ? 自身の変化から、竹中の思う「新しい教育」像まで話を聞きました。

独りよがりなコンサル時代から一転、気づいた「人は変わる」

「学校は変わるし、変えられる」

今年4月、息子が通う小学校のPTA会長を引き受けた、竹中紳治(以下、竹中)プライベートでは、7歳と5歳の子どものお父さんです。コロナ禍で保護者同士、保護者と学校の接点が減っていた中、PTAに携わることで竹中は「想像していた以上に、学校は保護者の近くにある」との思いを強くしていきました。

「校長先生や教頭先生から電話がかかってくるんですよ。『今度こういう企画をやろうと思っているんだけど、保護者としての意見を聞きたいです』って。耳を傾けていただけるんだ、と驚きました。学校や地域と、保護者一人ひとりが“繋がっている”と思うようになった。これまで学校やPTAに対して距離を感じていたのは、ただ私が、知らない世界を怖がっていただけなんだと」

書類に判子を押すためだけに学校に行かなければいけないなど、学校独特の文化に戸惑ったこともあるといいます。しかし「先生方のことを近くに感じられたことで、『慣習を見直しませんか』と提案してもいい、と思えた」と竹中。提案は受け入れられ、着任数ヶ月でPTA規約の変更が行われました。

もともとPTA活動や学校教育に対して、強い関心を持っていたわけではない。竹中が今、教育の創り手側に回った背景には、人の可能性にかける思いがありました。

  •  * *

大学で統計学を学んだ後に、生命保険会社に就職。その後、より俯瞰的に事業や業界を見る仕事をしたいと、コンサルティング会社に転職しました。

「当時の自分は、傲慢な人間だったと思います。自分よりも仕事ができないと思った相手に平然と『なんでできないの?』と言ってしまうような、偉そうなヤツでした。(笑)

コンサルティング会社から監査法人に移り、マネージャーの立場になったことで転機が訪れます。

「チームで成果を出さなければいけないのに、私は自分ひとりで仕事をしているような状態でした。“できない人の仕事は、最終的には自分が巻き取ってやればいい”とまで思っていた。もちろん、そんなやり方では限界があります。チーム崩壊のような状態になって、突きつけられたのは『私はメンバー一人ひとりの可能性と向き合っていない』ということでした」

そして竹中は、社内で自主的に集まったメンバーが共に学ぶ場を立ち上げます。通称・竹中塾。提案書のつくり方から会議の回し方など、これまで「自分が得意なのだから、自分でやればいい」と思っていたことを、他の人にも伝えてみようと思ったのだそうです。

「その経験を通じて“人は変わる”ということに気づいた。私が人との向き合い方を変えたら、関わった相手がそれぞれの可能性を開き、私の想像を超えて変わっていく。そのことに、なんだかワクワクし始めたんです」

徐々に竹中の関心は、自分ひとりで何かを成し遂げることではなく「一人ひとりが内に秘めた可能性」へと移っていきました。監査法人の人事部門に異動し、本業の傍ら個人事業主としてコーチングや経営支援を行うようになっていきます。そんな中で出会ったのが、「すべての人が自分らしい人生をデザインできる世界を」という大きなビジョンを掲げたLX DESIGN、そして代表取締役の金谷智でした。

「大丈夫かな、かなやん」いつしかLX DESIGNの未来が自分ごとに

金谷の第一印象は、と尋ねると、嬉しそうに笑ってこう言います。

「偉そうな人だと思いました。あと、うさん臭い人(笑)」

そして金谷が立ち上げていた、複業で先生をしたい人と学校をつなぐ、教育特化型の外部人材マッチングサービス『複業先生』の存在を知ります。竹中も複業先生のひとりとして、教壇に立ちました。

「子どもたちが、すごく嬉しそうな表情で私たちの話を聞いてくれたのが印象的です。これまで学校現場とは接点がなかった自分にとっても、学びのある体験でした。実際に授業をしたことで、『複業先生』のサービスの魅力を、より深く実感したところがあります」

そのうちに、複業先生としてLX DESIGNの経営支援にも携わるようになっていきました。ある日、ベンチャーキャピタルが企業に投資を行うか決定する、投資委員会の場に同席することに。竹中は金谷と一緒に、資金調達のためにプレゼンテーションを行いました。

「大丈夫かな、かなやん」

個人事業主の立場で、第三者的にLX DESIGNに関わっていた竹中は、 投資委員会の場に高揚する反面、居心地の悪い、そわそわするような気持ちを味わっていたといいます。

(ちなみに『かなやん』は金谷のニックネーム。社内はニックネームで呼び合っています。)

当時は今ほど、会社の目指す方向性が言語化されていませんでした。「これから社長はどのようにして、事業を広げていくのだろうか。社長ひとりで大丈夫かな」と自分ごとのように不安を覚えたのだとか。

しかし、竹中には予感めいたものがありました。今はまだ「解像度の低い写真」のようにぼんやりとしている、金谷が描こうとしている世界が鮮明に見えたとき、きっと学校や、それを取り巻く教育業界は変わる。それくらいのことをやろうとしているのだと。

この投資委員会に参加したのが、今から1年2ヶ月前の話。それから僅かな時間で、LX DESIGNは急速に事業を成長させてきました。2022年10月12日、株式会社ベネッセホールディングスを引受先とする第三者割当増資を実施、シードラウンドでの資金調達を行ったことを発表。傘下であるSchoolTech事業を展開するClassi株式会社と協業しながら、学びの共創に取り組んでいきます。

深夜3時、富山で語り合った「新しい教育」の姿は

大きな発表をしたあとの2022年10月中旬、金谷の故郷である富山にLX DESIGNのメンバーが集まり、会社の今後を語り合いました。

「LX DESIGNのアドバイザーであり、元校長先生の福田晴一さんと『今後の教育はどう変わっていくんだろうね』と話したんです。話が熱を帯びて、うっかり深夜3時くらいまで(笑)。

その時に私の頭に浮かんだのは、前職で関わりの深かった『FinTech(フィンテック)』の世界でした。銀行や証券、保険などの金融ビジネスは、情報テクノロジーの技術を掛け合わせることにより、革新的なサービスや事業を誕生させてきました。この変革によって、これまでは金融サービスとは関わりのなかった業界や、日常のシーンにも、形を変えた金融が深く入り込んでいくことになった。これに近いことが、教育業界においても起きると思うんです。

教育もまた技術によって形を変えて、日常のさまざまな場面に溶け込んでいく。人それぞれ異なる『自分らしさ』を生きていく未来において、その『新しい教育』が人の可能性を広げていくことができるのなら、それはとても素敵なことだと思ったんですよね」

11月1日、竹中はLX DESIGNに入社。正社員として改めて働くことになりましたが「入社したからといって、何かが大きく変わるというわけではない」と話します。複業先生として関わり出してから今日まで、LX DESIGNという会社の成長の軌跡、会社の節目で起きた出来事。竹中にとって、それらは「自分ごと」として深く記憶に刻まれているのです。

「私はこれまで、他者が抱えている不安や悩みに寄り添い、対話を通じて笑顔になる手助けをしたいと思ってきました。その個人的に達成したい思いと、『すべての人が、自分らしい人生をデザインできる世界を』というLX DESIGNの目指す方向性が、今は重なって見えるのです。だからもう、LX DESIGNや金谷が描く未来が、自分のことのように思えて仕方がない。私だけではなく、LX DESIGNのメンバーには同じように感じている人も多いと思います。

金谷の夢が、いつの間にか“私たちの夢”になっちゃったんですよね」

  •  * *

PTA会長の任期は1年でしたが、2年目も続投を決めた竹中。最近では、「地域とともにある学校」を目指したコミュニティ・スクールの委員も務め、より深く足を踏み入れています。

「新しい出会いを大切に、丁寧に関係性を紡いでいく。それが自分の可能性も、誰かの可能性も開く。そんな『可能性に尽くす』生き方を通じて、新しい教育のあり方を考えていきたいです」

取材・文/塚田智恵美


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