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【インタビュー】今、教育の創り手になるVol.5「誰かの“自由で、その人らしい試行錯誤”を支える自分でありたい」

社会に開かれた、次世代の教育のあり方が模索されている、昨今。異なるフィールドから、新たな教育の「創り手」側に飛び込もうとしている人もいます。このインタビューではLX DESIGNの仲間を紹介し、その素顔、本人を突き動かす動機や挑戦にかける思いに迫ります。

今回は、CWO、学校・自治体連携担当の板垣達周(36)を取り上げます。学校向けのコーディネーターとして私立学校や自治体に営業をしたり、必要なチームをつくったりしている板垣。教育委員会で働いた経歴も持ち、学校現場と外部の人たちとの橋渡し役でもある板垣は、どのような思いでLX DESIGNに携わっているのか、話を聞きました。 

ルールは絶対に破ってはいけない。……本当に?

未だ、答えの出ない記憶が板垣達周(以下、板垣)にはあるといいます。

大学卒業後、出身地である島根県出雲市の教育委員会に就職した板垣。理科の教員免許を持っていたことから、教員の業務をサポートするスタッフとして働きつつ、出雲科学館で子ども向けの理科実験を行う仕事をしていました。

ある日、実験イベントの終了時刻と同時に、科学館に飛び込んできた親子がいました。聞くと、遠方からわざわざ実験を楽しみに足を運んだのだといいます。しかし間に合わず、残念そうな親子。20代前半の板垣は思わず「では1回だけ」と、特別に実験をさせてあげることにしました。

すると、別の保護者の方からお叱りを受けました。「うちの子だってもう1回やりたいのに、終わりの時間だから、我慢しているんです。ずるいじゃないですか」。

そのとき、どうすれば良かったのか。

ルールを守ることを教えなければいけない立場の自分が、曖昧な対応をしてしまったことを反省しながらも、板垣の心には小さな棘のようなものが刺さりました。

自由と制限。決まりごとに則った一律の対応と、人と人との間で生じる柔らかなコミュニケーション。

「ルールは大切だ。でも、もっと“人と人”で向き合う方法はなかったのだろうか?」

その問いに明確な答えは出せないまま、板垣は今、LX DESIGNの中でも、“人と人”で柔軟に向き合うことが求められる、CWO、学校・自治体連携担当を担っています。

自分があげた「問い」を出発点に、自由に探究してくれた喜び

子どもの頃は「自由に発想し挑戦できる人や、その発想を受け止めてくれる大人に憧れていた」と語る板垣。幼少期の自身を「大人から『これをやりなさい』と言われたことに従っていれば評価されるだろう、と窮屈な考えを持っていた」と振り返ります。

就職し、科学館で働いていたときに、一つの転機がありました。紙飛行機をつくる実験教室でのことです。

「紙飛行機に粘土で重りをつけてみて、どれだけ遠くに飛ばせるかを実験するのですが、僕はあえて“正解”のようなものを教えないことにしたんです。紙飛行機の基本のつくり方、どこに重りをつけるとどう飛ぶのか、といった基礎知識は教えますが、では、どんな折り方で、どれくらいの重さの粘土をつけると、一番遠くまで飛ぶのかはわからない。それぞれの発想で、自由にやってみようと伝えました」

すると、子どもたちは自由自在に試行錯誤を始めました。ああでもない、こうでもないと格闘する子どもたち。その様子を見て「そこに重りをつけるの?」と驚いている保護者たち。それを見て板垣は、これまでにない喜びや感動を味わったといいます。

さらに、この実験を夏休みの自由研究として取り組み、出雲市の自由研究大会で受賞した子もいたのだそうです。

「何十機も自分で紙飛行機をつくって、綿密な研究結果にまとめてくれた。僕が出した問いに、ここまでのめり込んでくれたんだと感動しました」

かつて、自由に何かに没頭することができなかった少年。大人になり、教育に携わることで、子どもたちの自由な興味や関心を促す喜びを知った瞬間だったのかもしれません。 

「ダメな自分も許される」居場所に巡り合って

出雲市教育委員会に四年間勤務したのち、人材派遣会社を経て、地方創生×教育をテーマとした非営利団体に参画。しかし、ここで思わぬ挫折が待っていました。

「君には意志がないの?」

突然、そう問われた板垣。自分のやりたいことや、成し遂げたいことを重視する社風の組織に属し、周りは強い意志を持っているように見える人ばかり。板垣は「僕には、強烈な意志のようなものはない」と自信を失います。

「自分を優秀な人間だと思い込み、地方の教育を変えるんだと意気込んでいたけれど、結局、僕には具体的に『~をしたい』といった強い意志がなかった。自分がダメな人間に思えてきて、当時はつらい時期でした」

その後、たまたまLX DESIGNと出合った板垣。

「『複業先生』のサービスを知って、すぐに登録をしました。複業先生として授業ができたら、と思っていたのですが、LX DESIGNの内部に関わるお仕事のお誘いを受けて、参加を決めました」

LX DESIGNには「ダメな自分も許される」雰囲気があったと板垣は語ります。

「たとえばチームメンバーが集まる合宿に向かう飛行機に、僕が乗り遅れたとき、みんなが笑いながら遅刻した僕を迎えてくれたんです。他にも、ここではとても言えないようなミスをしたとき、みんながいじってくれたり、フォローしてくれたりしたことも……。普通なら笑えないようなミスも、乗り越えた後は『いたちょさんらしいね』と認めてくれる。ある判断基準をもって、人の良し悪しをジャッジするのではなく、その人らしくいられることを大事にする組織なんだと感じました。その雰囲気が、僕にとっては居心地が良かったんですよね」 

授業の後にできた長蛇の列。血の通ったつながりが後押し

LX DESIGNの学校コーディネーターは、学校と、複業先生に登録されている外部の社会人とをつなぎ、授業が実施できるようにサポートしています。2022年9月、板垣にとって思い入れのある授業が実現しました。島根県出雲市立大津小学校で、小学校から付き合いのある友人であり、東京大学大気海洋研究所助教で“ウナギの研究者”の板倉光さんが『複業先生』として登壇したのです。

「僕にとって特別な親友で、尊敬する研究者でもある彼の言葉を、ぜひ小学生に届けたかった。しかし、実際は研究に忙しい日々の中で、彼が授業の準備をするのは相当大変だったと思うんです。

授業の直前、一緒に昼食を食べていたら、彼がぼそっと『お前じゃなきゃ、断っていたかもしれない』と言ってくれたのが、今も印象に残っています」

1コマ目の授業を終えたとき、板倉さんのもとには長蛇の列ができました。授業を聞いた小学生が何人も、質問したくて列に並び、次の授業が始められないほどになったのです。

「子どもたちは本当に楽しそうだった。たぶん、初めて聞くような話ばかりだったんだろうな。僕の友人は声を枯らしながら、一生懸命、小学生の熱意に応えていました。ご協力くださった大津小学校の先生方も笑顔で。それを見て『この授業ができて、本当に良かった。僕と彼の個人的なつながりや、これまで“人と人”として向き合ってきたことが、この授業の実現を後押ししたのなら、たまらないな』と思ってしまいましたね」

***

現在、板垣はLX DESIGN内でCWOとしても活動しています。CWOとは、Chief “Well-being” Officerの略だそう。

「LX DESIGNが『すべての人が自分らしい人生をデザインできる世界を』というビジョンを掲げている以上、まずはLX DESIGNで働くみんなが、それぞれ自分らしい人生を描けるような働き方、生き方をできるようにサポートしたいと思ったんです」

なぜその役割を板垣が担うのかを問うと、板垣は言いました。

「僕は、僕の周りの人たちが自分らしくいられる状態が好き……というか、そうあってほしい、と思っているんです。まずは家族、友人、学校、そして今一緒に働くLX DESIGNのメンバーに、自分らしくいられる、そして自由に発想を表現できるような居場所をつくりたい。その輪がどんどん広がっていけばいいなと思う」

取材の最後に改めて「今、したいことは?」と聞くと「そう聞かれると、特別これと言ったものはないんですよねえ」と笑う板垣。「ほんと、僕は、これをどうしてもしたいという強い意志がない人間なので」。

板垣が“意志がない人間”なのではなく、どんな自分でありたい人間なのか。板垣が知らなくとも、きっと、LX DESIGNで一緒に働く仲間たちが知っています。

取材・文/塚田智恵美


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