2022年12月13日、宮崎県小林市立野尻中学校にて複業先生を活用した情報教育が行われました。
今回登壇してくださった複業先生は、社内向けシステムエンジニアの桑名勇輝氏です。今回の授業で桑名氏は、SNSに関する犯罪例やSNS利用マナー、リスクマネジメントについて語りました。小林市立野尻中学校では、初の外部講師によるオンライン授業でした。
<複業先生プロフィール> 社内向けシステムエンジニア 桑名勇輝氏 職歴:プログラマー→サーバー保守→Appleカスタマー→病院情報システム保守(現職)上記と並行して、通信高校等で【情報】の教諭としてスクーリングを担当。昨年からは看護学校でも情報の授業を担当。専門:情報コミュニケーション・シアターゲーム(リアルでのアイスブレイク)
授業の実施目的と依頼背景
今回の授業の実施目的は、自分や他者の命の大切さについて考えてもらう機会を子どもたちに提供することでした。
野尻中学校の先生方からは、現代の子どもたちの生活に密接に関係しているSNSにおける利用マナーやリスクマネジメントと関連付けて命の大切さを伝えてほしいとご依頼を受けました。
授業概要
- 日付:2022年12月13日
- 授業時間:70分
- 開催方法:オンライン
- 授業形態:講義形式
- 参加人数:147名
- 学年:中学1・2・3年生
- 設置区分:公立中学校
- 複業先生名:桑名勇輝
- 複業先生の職種:社内向けシステムエンジニア
授業内容について
当日の授業は、以下のトークテーマに沿って進められました。
- SNS利用時のマナー・注意点
- SNS利用のリスクマネジメント方法
- SNSを利用した犯罪例
- 実際にSNS犯罪に巻き込まれてしまった場合の対処法
中学生を襲う1800件以上のSNS犯罪の数々…被害に遭わないためにできること
桑名氏は、SNS犯罪の例として最初に「性犯罪」をピックアップしました。
厚生労働省によると、SNSによる犯罪件数は1年あたり1800件以上。被害者生徒のうち90%近くが中高生とのことです。
「性被害というと強制わいせつのイメージを抱かれる方も多いでしょう。しかし、実際は生徒自身が自分の写真を送ってしまう、あるいは知らないうちに写真を撮影されてしまう事件が半数を超えています。」
また、「性犯罪に遭ってしまった」という恥ずかしさから警察への届け出をためらってしまうケースは少なくないとのこと。そのため、実際の被害件数はさらに多いことが推測されるそうです。
続いて桑名氏は、「だからこそ、SNS上で知り合った人と簡単に会ってはいけません」と伝えます。
「SNSの中の人がどんな人なのかを判断するのは大人でも難しいです。SNSで危険な目に遭わないようにするには、オンラインツールや電話機能を使ってどんな人かを事前に知っておく必要があります。しかし、簡単に人と人がつながれるSNSでは、そこまで段取りを組むことはありません。だからこそ、SNSで出会った人とは簡単に会ってはいけません」と桑名氏は続けました。
次に紹介されたSNS犯罪は、いじめ。とくに無料通信アプリLINEを利用したいじめが増加しているといいます。
例として桑名氏は、2019年に実際にあった女子中学生の事件を挙げました。複数人の男女からLINEでのメッセージで脅迫を受けた女子中学生が、わいせつ画像を送ってしまった事件です。
加害者はLINE履歴の削除やスマートフォンの初期化などで証拠隠滅を図りましたが、後にデータが復元されたといいます。この事件について、桑名氏は「加害者がみなさんと同じ中学生であること」「当人たちにあまり重大な犯罪を犯したという認識がないこと」を強調しました。
「SNSや無料通信アプリなどを使った身近なツールで、同年代の人々が事件に巻き込まれている」という悲しい出来事に、生徒たちは真剣に耳を傾けていました。
参考:厚生労働省【児童買春事犯等】 検挙件数・検挙人員・被害児童数の推移
SNSにより身近になった犯罪と、加害者が歩む未来
続いて桑名氏は「SNS犯罪の加害者がこれからどんな将来を歩むか、考えたことはありますか?」と生徒たちに問いかけます。
「こういったケースではかなりの数の加害者が特定され、SNSでは彼らの個人情報が出回っています。インターネットに出回ったこれらの情報は、基本的に消去できません。
彼らには今後、受験や就職、結婚と、様々なライフイベントが待っているでしょう。しかし就職活動の採用面接で、事件の情報が面接官の耳に届くかもしれません。結婚が決まったとしても、ひょんなことから相手に過去が知られてしまうこともあるでしょう。
このように、何年も前に犯した事件が最悪のタイミングで明るみになり、人生が一転してしまうことは珍しくありません。これがSNSの怖さなのです。」
同時に、SNSによって犯罪がより身近になってしまったことの危険性に触れました。
「いじめも犯罪の一つです。こういったケースは、単なる子どもの悪ふざけではなく『強要罪』として捜査されています。また、SNSで誹謗中傷をすれば、『侮辱罪』に問われるでしょう。SNSの発達によって、皆さんのような若い人たちも軽い気持ちで犯罪を犯すことにつながってしまう世の中になってしまったのです。」
「巻き込まれた/巻き込んでしまったら…」対処法は「第三者を頼ること」
実際にSNS犯罪に巻き込まれた際の対応として、桑名氏は次のように述べました。
「被害者・加害者のいずれになってしまった場合も、まずはスクリーンショット等で証拠を残してください。続いて、大人に相談すること。親や先生、場合によっては弁護士や警察に頼る必要もあるでしょう。身内や知人に相談しにくい場合は、行政の相談窓口を利用してください。」
「SNS犯罪は、当事者間では絶対に解決できない」と念を押す桑名氏。『怒られるかもしれない』や『恥ずかしい』と相談をためらわず、第三者を頼ることが大切だといいました。最後に桑名氏は、情報社会のあり方に触れました。
「『情報』というと、どうしてもプログラミングやパソコンに着目しがち。しかし、何も考えずに投稿してしまった言葉は、時に人の人の生死を決めるほど大きな影響を及ぼします。みなさんが何気なくSNSに書き込んだ言葉に傷つき、誰かが命を経ってしまう可能性があるのです。
SNS・インターネットを利用する際の心構えをしっかりと意識した上で、これからの情報社会を生き抜いてください。」
「SNS利用時は思いやりと人権を大切にしたい」と語る生徒や生徒の感想
生徒からは「SNSを利用した犯罪について、ここまで深く知らなかった」「私たちと同じ年代の人たちが犯罪に遭っているなんて驚いた」など、たくさんの感想が寄せられました。
また、「犯罪に巻き込まれたとき、勇気を出して相談することや、周囲の人まで巻き込まれないようみんなで対策を考えていくことが大切だと感じた」と、桑名氏の授業内容を日常生活に活かそうとする生徒の姿勢も見られました。
最後に、生徒代表として、Aさんがお礼の言葉を送りました。
「多くの児童・生徒がSNSを通じて被害に遭っているということに驚き、恐ろしさを感じました。ご紹介いただいた事件は、いじめではなく犯罪だと思います。私自身も普段SNSを利用します。SNSは便利な一方、人を死に追いやる『凶器』にもなります。
SNSを正しく使うために、他人への思いやりや人権を大切にすることを意識していきたいです。また、実際に事件に巻き込まれた際は、証拠を残すことや、相談するということを学んだので、困ったときは活かしたいです。ありがとうございました。」
『複業先生』に関してはまずはお気軽にお問い合わせを!
今回の記事は、小林市立野尻中学校にて行われた、複業先生を活用した「情報教育」についてご紹介しました。
今回ご登壇いただいた桑名氏には、現代社会におけるSNS利用マナーやリスクマネジメント、SNSによる犯罪例についてお話いただきました。
今回の記事を読んで「他校の事例も見てみたい」「『複業先生』について具体的に知りたい」「学校の先生とのつながりをつくりたい」と思われた学校の先生方、以下のコンタクトフォームからお問い合わせ可能です。まずはお気軽にご相談ください。