2023年4月27日(木)に行われた、グロービス主催のスタートアップ企業を対象とするアクセラレータプログラム「G-STARTUP」( https://g-startup.jp/ )の6th Batch Demo Day(成果発表会)におけるLX DESIGN(以下:LX)代表金谷のピッチレポートをご紹介します。
当日は、集まった国内有数のベンチャー・キャピタル、エンジェル投資家ら過去最大110名超の出資検討者を前に事業プレゼンテーションを行い、優秀賞とオーディエンス賞を同時に受賞。
金谷はピッチイベントにて、学校現場が抱えている課題やそれに対するアプローチと今後の展望について語りました。
※G-STARTUP:将来的に日本を代表するベンチャー企業になると期待されるスタートアップの起業家を支援する、アクセラレータープログラム。ユニコーン企業を100社輩出するプラットフォームの構築を目的とする。(詳細はこちら:https://g-startup.jp/)
※当日の詳しい内容は、以下の記事からもご確認いただけます。
休眠免許保有者は500万人。先生不足に陥る学校現場の実態とは
「学校教育から一兆円企業をつくり出す。」この一言を皮切りに、金谷の自己紹介からピッチがはじまりました。
「起業前は先生として、東京都港区品川の小学校に4年間勤めていました。『両親ともに先生』の家庭で育ち、幼い頃から先生として生きていくつもりでした。しかし、次第に学校業界のひずみに気づき、起業を決意したのです。」
続いて「皆さんは、学校からの授業依頼や人材募集を見たことはありますか?」と問いかける金谷。依頼・募集がチラシやSNSによってなされた結果、情報が散財し、属人的かつ非効率となっている事態に警鐘を鳴らしました。
「国内には3万5,000校が全国各地、もちろん離島等にも散っていて、100万人の教員の方が学校現場で働いています。『お金がないから』『教員免許を持っている人が足りないから』と考える人もいますが、それは全くの誤解です。」
学校現場では人件費以外の費用も含めて毎年20兆円の予算が用意されており、500万人もの休眠免許の保有者が存在すると、金谷は説明しました。しかし、「人材が不足しているものの、予算は余っているといった大きなひずみが起こっているマーケット」であると続けました。
時代の変化に取り残された学校現場の硬直的な原因解決に取り組む『複業先生』
「なぜ、学校現場でこのような事態が起きているのでしょうか。それは、先生の働き方や学校現場における予算の使われ方が極めて硬直的で、時代の変化に対応していないから。それによって、資本投下やオペレーションの効率が極めて悪くなっているのです。
大きなマーケットであるがどこから取り組むかということで、我々は出前授業のマッチングサービスである『複業先生』のサービスを展開しています。
『複業先生』は、複業(副業)で先生をしたい人と学校をつなぐ教育特化型の複業案件プラットフォームです。学校だけでは手が回りづらい、キャリア教育・プログラミング・グローバル・ITなどの分野を、これまでの仕事や経験を分かち合いたい人がスポットで『先生』として授業に登壇できるサービスです。」
これにより、人手不足の「教員の頭数が足りない量」と「プログラミング教育や起業家教育などの教員が対応できない領域が増えている質」の両方の課題解決の一助になると続ける金谷。
「複業先生のサービスは、国内300校に導入いただいており、3,000校が導入を待っていただいていている状態です。また、全国には1,000名を超える複業先生の登録者の方々がいらっしゃいます。2023年には業界大手ベネッセ様からも支援をいただきました。」
先生の負担を70%削減。学校現場のニーズ把握から人材のオンボーディングまで
金谷は続けて、「学校現場における課題を、3つのステップに分けてアプローチする」といいました。1つ目は、先生の負担を下げること。2つ目は、先生の働き方の柔軟性を上げること。3つ目は、テクノロジーによって働き方以外にかかわるオペレーションを改善することです。
「課題解決の方向性として、私たちは持続可能なコミュニティを学校現場とわかち合い、テクノロジーによってオペレーションを改善することを考えています。つまりワークシェアとDXによって構造的な変革を促します。」
LXが自治体向けの営業を一括して担い、「学校現場のどこにどのような人のニーズがあるのか」を収集・一元化。さらに個人のニーズや免許制度に合わせ、学校現場と人のマッチングからオンボーリングまでを行うと、金谷は説明しました。
「先生へのニーズのヒアリングをオンライン上で完結させ、これまでブラックボックス化されていた授業の準備プロセスを全て可視化・蓄積しています。探究学習やキャリア教育だけでなく、国語や算数などの教科学習や、部活動やICTの支援などの継続案件まで対応できるようになりました。」
続いて金谷は取り組みの成果として、「結果的に最初はハードルが高いかもしれませんが、長い目で見ると負担も軽減され、事業の品質や満足度が高い状態が続いています。先生や生徒からは、高い評価をいただきました。
個人側の登録者にとってもこれまで学校現場に携わる機会が整備されていなかったため、この機会自体がイノベーディブと言えるでしょう。」と説明しました。
金谷の小さな家族感から始まった事業|世の中に社会的インパクトを創り続ける
最後に金谷は、教育業界はたしかに難しいと言われる中で、これからも教育業界で事業を展開し続ける理由を2つ述べました。
「ひとつは、どうしても両親と同じ学校の先生になりたかった。ただそれだけです。2つ目は、100万人の学校の先生がいる中で誰も教育業界にチャレンジしていないからです。誰かが変革しないといけないのに、誰もできませんでした。
金谷の母がかけた『頑張ったら、今よりももっと素敵な人たちに会えるよ』という言葉と金谷の小さな家族観から始まったこの事業。共感いただく皆様のおかげで、人生をかけてチャレンジできています。ありがとうございました。」と締めくくりました。
今回のピッチイベントでは、ありがたいことに優秀賞とオーディエンス賞を受賞いたしました。我々は、今回の受賞を大きな転換点として受け止め、今後さらなる社会的インパクトの創出を目指します。